男性のための避妊方法として広く行われているのがパイプカットです。
パイプカットという名前を聞いたことがあっても、どのような手術か具体的にイメージできない人も多いと思いますが、パイプカットとは、男性器の内部の精管を一部切除することで、妊娠を効果的に防ぐことができる方法です。
誰でも簡単に施術を受けられるというわけではなく、特定の条件に当てはまっている男性だけが、医療機関で手術を受けることができます。
ここではパイプカットをこれから検討している人が知っておくと役立つ、パイプカット手術の仕組みや、基礎的な知識についてまとめて紹介します。
パイプカットとはどのような施術か
パイプカットは、避妊を目的にして行われる施術ですが、施術の内容を理解するためには、人間の男性器の仕組みを詳しく知っておく必要があります。
男性器の中で精子が作られているのは睾丸ですが、睾丸と尿道を結んでいるのが精管です。
精子は精液が体外に排出される際に一緒に排出されますが、精液が人間の体内で作られているのは、前立腺という男性器内の別の場所です。
前立腺は陰茎の真下にある器官で、膀胱とつながっている場所です。
精液が体外に排出される時に、睾丸から精管を通って精子が精液の中に入り、精液と一緒に尿道の出口に排出されます。
パイプカットとはこの睾丸と尿道を結ぶ精管を途中でカットする施術のことで、切断した精管の両端を閉じた状態にすることで、精液の排出時に液体の中に精子が混ざるのを防ぐことができます。
精管は切断して縫合する方法の他に、途中でしばる方法もあり、精子の流れを途中で断ち切ることができるので、カットとした場合と同じような効果を得ることが可能です。
どちらのタイプの施術でも男性器にメスを入れることが必要で、右側と左側の両方の精管に施術をする必要があります。
手術を終えるまでにかかる平均的な時間は数十分程度です。
パイプカットの具体的な手順とは
パイプカット手術を行う場合には、まず睾丸を包んでいる陰嚢にメスを入れて、男性器内部の精管を見える状態にします。
あらかじめ陰嚢に麻酔をすることで、施術を受ける患者はほとんど痛みを感じずに手術を終えることができます。
カットするタイプの施術をする場合には、精管の中間部分を切断してその両端を手術用の糸で縫い合わせることにより、精子が尿道に輸送されない状態にすることができます。
精管をしばるタイプの施術は、精管を途中でカットするが必要ないので、精管を切ることに抵抗がある人にもよく利用されている方法です。
精管部分の手術を完了したら、手術をするためにメスを入れた陰嚢の切り口を、手術用の糸で縫い合わせます。
糸は体内で自然に溶けるタイプのものが使用されるのが一般的なので、手術後にあらためて抜歯をする必要はありません。
なお、パイプカット手術は望めば誰でもすることができる手術ではなく、母体保護法という法律に定められた基準に従って行う必要があります。
子供が複数いることや、子育てが一通り終了していることなどが、パイプカット手術が認められるための条件です。
結婚をしている男性だけが行うことができ、手術の際には配偶者の同意も必要です。
パイプカットに関する基礎知識とは
パイプカット手術をこれから受ける予定がある人は、パイプカットに関する基礎的な知識を一通り学習しておくことで、より安心して手術にのぞむことができます。
パイプカットをしようと考えているの多くが気にしているのが、パイプカットをすることで性欲が減少する恐れですが、結論から言えばパイプカットを行っても必ずしも性欲が減少するわけではありません。
なぜならば、パイプカットとは精子が作られる睾丸と、精液を排出する尿道を結ぶ精管の部分を切除したり、しばったりするだけの施術であるために、睾丸内の精子の製造には直接的な影響を与えないからです。
睾丸内の精子が精液の中に混じって体外に排出されなくなるだけなので、精子自体は普通に体内で作られます。
体外に出られなくなった精子は、他の細胞の活動によって体に吸収されるために、古くなった精子がそのままいつまでも睾丸に残るわけでもありません。
性欲の減少に大きく関係するのが性ホルモンの分泌ですが、精管をカットしても性ホルモンの分泌に直接的な影響はないために、カット前と同じように性欲を感じることができるのが一般的です。
パイプカットは自由診療なので施術を受けるクリニックによって料金も異なり、10万円から20万円程度が平均的な料金です。
まとめ
パイプカットとは、精子を作っている睾丸と、尿道を結んでいる精管を途中でカットしたり、むすんだ状態にする施術です。
精管の流れを途中で切断することにより、前立腺から精液が排出された時に、精管を通って精液の中に精子が混じるのを防ぐことができます。
男性のための効果の高い避妊方法として知られていて、手術は数十分程度の時間で終えることができます。
パイプカットをしても睾丸では精子が製造されて、排出されない精子は睾丸内で他の細胞の活動により吸収されます。
施術は母体保護法という法律の規定にしたがって行われ、既婚の男性だけが手術を受けられます。